東京高等裁判所 昭和47年(う)582号 判決
被告人 味形康雄 外四名
〔抄 録〕
二 国選弁護人について
被告人らのために選任された本件国選弁護人らが、当初から防禦方針特に裁判所の定めたグループ別審理方式に従うか否かをめぐって被告人らと対立し、その結果右の弁護人らが辞任を申し出たり、被告人らが国選弁護人の解任を請求したことは記録上明らかである。
ところで、国選弁護人は、裁判所が正当な理由があると認めて解任の手続をとったときに初めて弁護人たる地位を離脱するものと解すべきであるが、本件においては、国選弁護人らが被告人らに対し、裁判所の定めた審理方式を前提として防禦の方策を講ずべきである旨を、法律専門家の立場から助言したのに対し、被告人らは、かたくなに統一公判を要求し続けてグループ別による審理の進行を阻止しようとする態度を固執し、国選弁護人らに対してもこれに同調することを強く迫り、しばしば不当な言動に及んで正常な弁護活動を困難ならしめたものであって(なお所論は、右のような事実の認定について、その手続等を問題とするが、受訴裁判所として、国選弁護人の選任や解任のような事項に関して事実の取調をする場合に、その手続に被告人らを関与させなかったとしてもすこしも違法ではないし、その結果なされた事実の判断に誤りがあるとも思われない。)、弁護人側には、弁護士倫理に違反する所為とか、その他本件の弁護に当たることが適当といえないような特段の事情があったものとは到底認められず、仮りに弁護人を代えてみても、事態はあまり変わらなかったものと考えられ、そのいずれについても、解任すべき正当な理由があったものとは認められない。
本件各国選弁護人らと被告人らとの間に通常の場合のような信頼関係がついに樹立されず、結局ごく限られた局面でしか弁護活動が行われ得ずに終わったとしても、やむを得ないところといわなければならないのであり、その不利益は被告人らにおいて甘受すべきものであって、原裁判所が、辞任を申し出た弁護人について解任の手続をとらず、かつ解任請求をも却下して、右の各弁護人らが引き続き弁護人の地位にあるものとして手続を進め、判決にまで至ったことが、被告人らの弁護人依頼権その他の防禦権を侵害し、憲法三七条三項等に違反するものであるとはいえない。論旨は理由がない。<中略>
なお所論は、原審において黙秘権の告知や更新手続が適法になされていないと主張するが、当該公判調書の記載によれば、原審裁判長は、いずれも弁護人出席のもとに、その方式について法令の許す範囲内で、右の各手続を行ったことが認められる。被告人らは、これらの手続に際し、いずれも、みずから訴訟指揮に従わないで退廷させられたのであるから、その結果被告人らが、黙秘権の告知を直接耳で聴いたり、更新に際し意見陳述その他の権利行使をする機会を逸したからといって、右の各手続が適法に履践されなかったということにならないことは明らかである。<中略>
五 原審の最終段階における諸手続について
原審第一四回公判で、被告人野間、同山田、同大内らにつき、当該被告人らが訴訟指揮に違反して退廷させられたのちにおいて、訴因変更の請求があり、それが直ちに許可されて次の手続に移っていることが明らかであるが、弁護人において、右の変更に異議がなく、かつ変更された訴因に対しても特に述べることはない旨陳述しているうえ、従前の審理の経過等に徴すれば、右の変更の内容も、被告人らの防禦に実質的な不利益を生ずるおそれのあるようなものではないと認められるから、右の訴因変更に当たって公判手続を停止しなくとも何ら違法とはいえない。
(戸田 大沢 本郷)